就労継続支援A型の基本報酬 — 制度の全体像#
就労継続支援A型の基本報酬はスコア方式で決定されます。事業所の経営状況や支援内容を7つの評価項目で点数化し、合計スコアに応じて報酬区分が決まる仕組みです1。
基本報酬を決定する3つの要素は以下のとおりです。
- 人員配置区分: 職業指導員・生活支援員の配置割合(7.5:1 または 10:1)
- 定員規模: 20人以下 / 21〜40人 / 41〜60人 / 61〜80人 / 81人以上
- 評価点(スコア): 7項目の合計スコア(最大200点、最低-70点)
スコア方式の7つの評価項目#
令和6年度の報酬改定で、従来の5項目から7項目に拡充されました。特に「生産活動」の配点が大幅に引き上げられ、新たに「経営改善計画」と「利用者の知識・能力向上」が追加されています2。
| # | 評価項目 | 配点範囲 | 評価の観点 |
|---|---|---|---|
| ① | 労働時間 | 5〜90点 | 1日の平均労働時間 |
| ② | 生産活動 | -20〜60点 | 生産活動収支と賃金総額のバランス |
| ③ | 多様な働き方 | 0〜15点 | 利用者の柔軟な働き方の整備状況 |
| ④ | 支援力向上 | 0〜15点 | 職員の研修・外部連携等の取り組み |
| ⑤ | 地域連携活動 | 0〜10点 | 地元企業との連携・施設外就労等 |
| ⑥ | 経営改善計画 | -50〜0点 | 計画未提出・未実施の場合に減点 |
| ⑦ | 利用者の知識・能力向上 | 0〜10点 | 一般就労に向けた支援の取り組み |
⑥の経営改善計画は加点ではなく減点項目です。計画の提出・実施を怠ると最大50点の減点となり、スコアが大幅に低下します。
令和6年度改定での主な変更点#
| 項目 | 改定前(旧5項目) | 改定後(新7項目) |
|---|---|---|
| 労働時間 | 5〜80点 | 5〜90点(引上げ) |
| 生産活動 | 5〜40点 | -20〜60点(減点あり・配点拡大) |
| 多様な働き方 | 0〜35点 | 0〜15点(縮小) |
| 支援力向上 | 0〜35点 | 0〜15点(縮小) |
| 地域連携活動 | 0〜10点 | 0〜10点(変更なし) |
| 経営改善計画 | — | -50〜0点(新設) |
| 利用者の知識・能力向上 | — | 0〜10点(新設) |
| 合計(最大) | 200点 | 200点 |
| 合計(最低) | 15点 | -70点 |
🧮 入力するだけで区分・単位数が分かる:就労継続支援A型 スコア方式シミュレータなら、7項目のスコアを入れるだけで合計点・報酬区分・基本報酬(単位/日)と「次の区分まであと何点か」を確認できます。
スコア別の報酬区分#
合計スコアに応じて、以下の7段階の報酬区分が適用されます3。
| 報酬区分 | スコア範囲 |
|---|---|
| 区分(一) | 170点以上 |
| 区分(二) | 150点以上170点未満 |
| 区分(三) | 130点以上150点未満 |
| 区分(四) | 105点以上130点未満 |
| 区分(五) | 80点以上105点未満 |
| 区分(六) | 60点以上80点未満 |
| 区分(七) | 60点未満 |
定員規模別の基本報酬単位数(1日あたり)#
以下は**サービス費(Ⅰ)(人員配置7.5:1以上)**の基本報酬です。スコアで決まる報酬区分(一〜七)と定員規模の組み合わせで単位数が決まります3。
| 報酬区分(スコア) | 20人以下 | 21-40人 | 41-60人 | 61-80人 | 81人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 区分(一)170点以上 | 791 | 710 | 672 | 660 | 641 |
| 区分(二)150点以上 | 733 | 656 | 619 | 609 | 588 |
| 区分(三)130点以上 | 701 | 626 | 590 | 580 | 559 |
| 区分(四)105点以上 | 666 | 594 | 558 | 547 | 529 |
| 区分(五)80点以上 | 533 | 474 | 445 | 438 | 422 |
| 区分(六)60点以上 | 419 | 373 | 350 | 344 | 333 |
| 区分(七)60点未満 | 325 | 288 | 271 | 266 | 258 |
※ 上表はサービス費(Ⅰ)(7.5:1以上)です。**サービス費(Ⅱ)(10:1以上)**はこれより低く、定員20人以下では区分(一)727/(二)671/(三)641/(四)608/(五)486/(六)382/(七)296単位です。指定障害者支援施設が行う場合はさらに別単価が設定されています。いずれもスコアによる区分(一〜七)の考え方は共通です3。
サービス費(Ⅱ)(人員配置10:1以上7.5:1未満)の全定員規模の単位数は以下のとおりです3。
| 報酬区分(スコア) | 20人以下 | 21-40人 | 41-60人 | 61-80人 | 81人以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 区分(一)170点以上 | 727 | 655 | 613 | 602 | 583 |
| 区分(二)150点以上 | 671 | 604 | 563 | 552 | 534 |
| 区分(三)130点以上 | 641 | 574 | 535 | 524 | 507 |
| 区分(四)105点以上 | 608 | 543 | 505 | 495 | 478 |
| 区分(五)80点以上 | 486 | 432 | 403 | 394 | 381 |
| 区分(六)60点以上 | 382 | 341 | 318 | 311 | 301 |
| 区分(七)60点未満 | 296 | 264 | 246 | 241 | 232 |
単位は「単位/日」。区分(五)以下で単位数が大きく下がる(例:定員20人以下で区分(四)666→区分(五)533=▲133単位)のがA型スコア方式の特徴で、労働時間・生産活動のスコアが報酬に直結します3。
なお、地域のA型事業所の分布や各事業所の概要は、当社運営のはなえみ就労ナビ(例:東京都の就労継続支援A型事業所一覧)で都道府県別に確認できます。
各評価項目の詳細と算定方法#
① 労働時間(5〜90点)#
利用者の1日の平均労働時間に応じてスコアが付与されます。令和6年度改定で最高点が80点から90点に引き上げられ、長時間の労働を提供する事業所がより高く評価されます2。
前年度の実績に基づいて算出します。平均労働時間には休憩時間を含みません。
② 生産活動(-20〜60点)#
生産活動収入から必要経費を控除した額と、利用者の賃金総額との関係を評価します。令和6年度改定で最も大きく変更された項目で、配点が拡大されるとともにマイナス評価(減点) が導入されました2。
- 生産活動収支が賃金総額を大きく上回る場合 → 高い加点
- 生産活動収支が賃金総額を下回る場合 → 減点(最大-20点)
評価対象期間は前年度、前々年度、前々々年度の3年間です。
③ 多様な働き方(0〜15点)#
利用者が多様な働き方を実現できる制度の整備状況を評価します2。以下のような取り組みが対象です。
- 短時間勤務制度の整備と利用実績
- テレワーク・在宅就労の導入
- フレックスタイム制の導入
- 週3日勤務など柔軟な勤務形態
④ 支援力向上(0〜15点)#
職員のキャリアアップの機会を組織として提供しているか等、支援力向上に係る取り組みの実績を評価します2。
- 職員の外部研修への参加(サービス管理責任者研修、強度行動障害研修等)
- 外部専門家の活用
- 学会発表・論文執筆
- 外部機関との連携による支援体制の強化
⑤ 地域連携活動(0〜10点)#
地元企業と連携した高付加価値の商品開発、施設外就労等により働く場の確保等、地域と連携した取り組みの実績を評価します2。
⑥ 経営改善計画(-50〜0点)【令和6年度新設】#
経営改善計画の作成状況を評価する減点項目です2。以下の場合に減点されます。
- 経営改善計画書を提出していない場合
- 数年連続で計画書を提出しているが、計画に基づく適切な取り組みを行っていない場合
加点はなく、適切に対応していれば0点(減点なし) です。未対応の場合は最大50点の減点となり、スコア全体に深刻な影響を与えます。
⑦ 利用者の知識・能力向上(0〜10点)【令和6年度新設】#
利用者の知識及び能力の向上のための支援の取り組み状況を評価します2。一般就労への移行を促す観点から新設された項目で、具体的な支援の取り組みが求められます。
スコアの届出と自己評価の開示義務#
届出の手続き#
スコアに基づく報酬区分は、毎年度4月に届出を行い決定されます。届出にあたっては「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」(障発0330第5号)に基づき、各項目のスコアを算出します4。
自己評価の開示#
令和6年度改定により、A型事業所はスコアの自己評価結果を公表する義務があります。利用者や関係機関が事業所の経営状況や支援の質を確認できるようにするための措置です2。
年度途中に新規指定された事業所#
年度途中に新規指定された事業所の場合は、「生産活動」の実績にかかわらず、初年度及び2年度目は評価点が80点以上105点未満であるものとみなして基本報酬を算定します5。
令和8年6月臨時改定の影響#
令和8年6月の臨時改定では、障害福祉サービス全体の基本報酬に引上げが行われています。就労継続支援A型の基本報酬もこの引上げの対象です3。
- スコア方式の構造(7項目・配点)に変更なし
- 全区分の基本報酬単位数が引上げ(評価点区分ごとに日額7〜90単位を加算)
- 処遇改善加算の算定率の見直し
スコアを最大化するための実務ポイント#
「労働時間」と「生産活動」が最重要#
スコア方式において配点が最も大きいのは「労働時間」(最大90点)と「生産活動」(最大60点)の2項目で、合計150点と全体の75%を占めます。
経営改善計画の減点を回避する#
⑥経営改善計画は加点項目ではありませんが、未対応の場合に最大50点の減点となるため、実質的に最も影響力の大きい項目です。計画書の提出と実施を確実に行うことが必須です。
③〜⑤と⑦の40点で差をつける#
多様な働き方(15点)、支援力向上(15点)、地域連携活動(10点)、利用者の知識・能力向上(10点)の合計40点は、取り組み次第で改善可能な領域です。
- 短時間勤務・テレワーク制度の整備と利用実績の確保
- 職員の外部研修への参加記録の蓄積
- 地域の企業や就労支援機関との連携協定の締結
- 利用者向けの資格取得支援・一般就労に向けた研修の実施
注意すべき減算#
| 減算項目 | 減算内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 人員欠如減算 | 所定単位数の70% | 人員配置基準の未充足 |
| 個別支援計画未作成減算 | 所定単位数の70%(2月目まで)/ 50%(3月以上) | 計画未作成・更新漏れ |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 所定単位数の1%減算 | 委員会未設置・指針未整備 |
| 虐待防止措置未実施減算 | 所定単位数の1%減算 | 令和6年度新設 |
| BCP未策定減算 | 所定単位数の1%減算 | 令和6年度新設 |
| 情報公表未報告減算 | 所定単位数の5%減算 | 令和6年度新設 |
よくある質問#
Q. スコアの評価対象期間はいつですか?#
原則として前年度の実績に基づいて算出します。ただし「生産活動」は前年度・前々年度・前々々年度の3年間の収支状況で評価されます。年度の切替え時(毎年4月)に新しいスコアで届出を行い、当該年度の報酬区分が決定されます4。
Q. 新規開設の事業所はスコアをどう算出しますか?#
開設1年度目は実績がないため、「生産活動」の実績にかかわらず所定の経過措置が適用されます。2年度目以降は1年度目の実績に基づいてスコアを算出します5。
Q. スコアが低い場合、年度途中に改善しても報酬は変わりますか?#
報酬区分は年度単位で決定されるため、年度途中のスコア改善は当該年度の報酬に反映されません。ただし、改善した実績は翌年度のスコア算出に反映されるため、中長期的な取り組みが重要です4。
Q. B型のように工賃月額方式は選択できますか?#
選択できません。就労継続支援A型はスコア方式のみが適用されます。B型のように複数の評価方式から選択する制度はA型にはありません2。
Q. 経営改善計画書を提出し忘れた場合どうなりますか?#
⑥経営改善計画で最大50点の減点が適用されます。合計スコアが大幅に下がり、報酬区分が2〜3段階低下する可能性があります。計画書の提出期限を確実に管理してください2。