就労移行支援・就労継続支援A型/B型では、事業所の外で行う支援として施設外支援と施設外就労の2つの仕組みがあります。名前は似ていますが、要件も報酬上の扱いも別物です。「施設外就労はなくなる」と言われることがありますが、なくなったのは令和3年度改定で廃止・再編された「施設外就労加算」であり、施設外就労という仕組み自体は続いています(要件を満たせば基本報酬を算定)1。令和6年度改定では実績報告書の毎月提出が廃止され(記録の作成・保存義務に変更)、施設外支援の個別支援計画の見直しサイクルが1週間ごとから1か月ごとに簡素化されました2。本記事では、就労系留意事項通知(令和7年3月31日改正版)に基づいて両者の要件を整理します。
施設外支援と施設外就労の違い#
| 項目 | 施設外支援 | 施設外就労 |
|---|---|---|
| 内容 | 事業所等とは別の場所で行われる支援(企業実習・職場実習、委託訓練、トライアル雇用など) | 企業から請け負った作業を、当該企業内で利用者と職員が行う支援3 |
| 日数制限 | 年間180日間を限度に算定3 | 日数制限の定めなし(要件を満たす場合に算定) |
| 職員の配置 | 事業所の支援として実施(日報・緊急時対応が要件) | 施設外就労を行う日の利用者数に対し報酬算定上必要な人数(常勤換算)を現地に配置3 |
| 契約 | 実習受入企業等との関係(雇用関係・請負契約は前提としない) | 施設外就労先の企業と請負作業に関する契約を締結3 |
「施設外就労はなくなる」のか|加算は令和3年度に廃止、仕組みは継続#
「施設外就労がなくなる」「施設外就労加算が廃止された」という話は、令和3年度報酬改定の内容を指しています。このとき廃止・再編されたのは加算であって、施設外就労という支援の形そのものではありません。
令和3年度改定の概要には、次のとおり明記されています1。
施設外就労に係る加算(※)を廃止・再編し、一般就労への高い移行実績や高工賃を実現する事業所、地域連携の取組への評価に組み替える。 (※)施設外就労加算及び移行準備支援体制加算(Ⅱ)
同じ項目には、施設外就労の扱いについてこう続きます1。
施設外就労については、一般就労への移行や工賃・賃金の向上を図るため有効であるとして促進してきたことから、引き続き実施していく。
つまり、加算という個別の報酬は消え、施設外就労は要件を満たす場合に基本報酬を算定する形に整理されたというのが正確な理解です。令和6年度報酬改定Q&A Vol.8(令和7年3月31日)でも、施設外就労は「一定の要件を満たした場合に限り、基本報酬を算定することとしている」と説明されています4。
廃止された加算と、組み替え先#
| 令和3年度改定で廃止・再編 | 組み替え先として示されたもの1 |
|---|---|
| 施設外就労加算 | 一般就労への高い移行実績を実現する事業所への評価 |
| 移行準備支援体制加算(Ⅱ) | 高工賃を実現する事業所への評価/地域連携の取組への評価 |
令和9年度改定に向けた議論の状況#
令和9年度報酬改定に向けた関係団体ヒアリング(第57回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム・令和8年6月26日)で、A型事業所全国協議会は「施設外就労は、企業での就労を体験することにより企業就労に向けた力をつけることができる。また、事業の拡大による生産活動の安定に資する」との認識を示したうえで、提言として「施設外就労加算を復活させる」を挙げています5。
ただし、これは関係団体の要望であって決定事項ではありません。令和9年度改定の内容は今後の検討チームでの議論を経て決まります。現時点で事業所が備えるべきは、後述する現行要件(請負契約・現地の職員配置・記録の作成保存)を満たしておくことです。
施設外支援|算定要件と180日ルール#
施設外支援は、次のア〜エの要件をいずれも満たす場合に限り、1年間(毎年4月1日〜翌年3月31日)に180日間を限度として算定します。この「180日間」は、利用者が実際に利用した日数の合計です3。
- ア:運営規程への位置付け:施設外支援の内容が事業所の運営規程に位置付けられていること
- イ:個別支援計画への位置付けと1か月ごとの見直し:事前に個別支援計画に位置付け、1か月ごとに内容を見直しているとともに、当該支援により就労能力や工賃(賃金)の向上・一般就労への移行が認められること
- ウ:日報の作成:利用者又は実習受入事業者等から、支援提供期間中の利用者の状況を聞き取り、日報を作成していること
- エ:緊急時の対応ができること
イの見直しサイクルは、令和6年度改定で1週間ごとから1か月ごとに簡素化されました2。
180日を超えて提供できる場合#
次の場合には、180日の上限を超えた提供が可能です3。
- 対象者が職場適応訓練を受講する場合で、要件を満たし訓練が就労支援に資すると認められるとき(訓練終了日まで延長可能)
- **トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)**で、個別支援計画の見直しにおいて延長の必要性が認められた場合
トライアル雇用を施設外支援として扱う場合#
利用中の事業所以外の事業所で障害者トライアル雇用等を実施する場合、①上記ア・ウ・エを満たし、②施設外のサービス提供を含めた個別支援計画を3か月ごとに作成(施設外サービス提供時は1か月ごと)・見直しを行うことで、施設外支援の対象となります。ただし、就労継続支援A型(雇用契約有)の利用者は、原則として障害者トライアル雇用等の対象になりません3。
実務上の注意点#
- 同日に施設外支援と通常の施設利用を行った場合は、施設外支援の実施日として扱います3
- 一般就労へ移行した者が職場適応援助者(ジョブコーチ)による職場適応援助を受ける場合は、施設外支援の基準を満たしません(トライアル雇用中の職場適応援助も同様)3
施設外就労|算定要件(ア〜オ)#
施設外就労(企業内就労)は、次のア〜オの要件をいずれも満たす場合に限り算定します3。
- ア:総数が利用定員を超えないこと。施設外就労を基本とする形態で事業を行う場合でも、本体施設には管理者及びサービス管理責任者の配置が必要
- イ:職員配置:施設外就労を行う日の利用者数に対して報酬算定上必要とされる人数(常勤換算)の職員を配置。事業所側は、施設外就労を行う者を除いた前年度平均利用者数に対して必要人数を配置。ただしサービス管理責任者は施設外就労を行う者を含めた前年度平均利用者数に対して配置
- ウ:運営規程への位置付け
- エ:個別支援計画の事前作成:施設外就労を含めた個別支援計画が事前に作成され、就労能力や工賃(賃金)の向上・一般就労への移行に資すると認められること
- オ:緊急時の対応ができること
また、施設外就労により就労している者と同数の者を主たる事業所の利用者として新たに受け入れることが可能です。報酬の適用単価は主たる事業所の利用定員に基づく報酬単価を適用します3。
請負契約の必須条件#
施設外就労先の企業とは請負作業に関する契約を締結し、次の点を明確にする必要があります3。
- 作業の完成についての財政上・法律上のすべての責任は事業所を運営する法人が負うこと
- 企業から法人に支払われる報酬は、完成された作業の内容に応じて算定されること
- 機械・設備等を借り入れる場合は賃貸借契約又は使用貸借契約を締結し、材料等の供給を受ける場合は代金の支払い等について明確な定めを置くこと
さらに、請け負った作業の利用者への指導等は施設外就労先の企業ではなく事業所が行い、事業所は作業を企業から独立して行い、利用者と企業の従業員が作業を共同で処理していないことが求められます3。
令和6年度改定の変更点|実績報告書の毎月提出が廃止#
令和6年度改定で、報酬請求にあたっての施設外就労に関する実績の毎月の報告は不要になりました。ただし、事業所には施設外就労の実績記録書類の作成・保存が義務付けられ、地方公共団体が利用者の訓練状況等の実態把握を必要と判断した場合には、当該書類を確認することとされています32。提出義務がなくなっただけで、記録がなければ運営指導で説明できない点は変わりません。
施設外就労と認められない事例(令和7年3月31日Q&A)#
令和6年度報酬改定Q&A Vol.8(令和7年3月31日)では、施設外就労に該当しない事例が明示されました4。
- 自法人所有の建物を企業に賃貸して作業する形態:法人Xが所有する建物を企業Zに賃貸し、そこに事業所Yの支援員と利用者が出向いて作業する場合、形式上は請負作業でも、その場で企業Zの経営が行われている実態がなければ施設外就労の要件を満たさず、基本報酬を算定できません
- 自法人が設置した「施設外就労先」施設での作業:法人Xが「施設外就労先」と称する施設を自ら設置し利用者に作業を提供する形態は、指定を受けていない場所での生産活動にあたる可能性があり、基本報酬を算定できません
指定権者は、指定申請や運営指導等で施設外就労の要件該当性を確認するとされています4。
営業時間外や早朝・夕方の施設外就労はできるか|同意だけでは足りない4つの条件#
就労先企業の稼働に合わせて、事業所の営業時間より早い時間帯(8時〜10時など)や遅い時間帯(16時〜18時など)に施設外就労を組みたい、という相談があります。国の通知やQ&Aに「営業時間外の施設外就労は不可」と定めた規定はなく、逆に「可」と明記した規定もありません。可否を分けるのは利用者の同意の有無ではなく、次の4点を営業時間外の時間帯でも満たせるかどうかです。
| 条件 | 根拠 | 営業時間外で問われること |
|---|---|---|
| 運営規程との整合 | 運営規程に「営業日及び営業時間」を定める義務(第89条第3号を第202条で準用)6。施設外就労は運営規程に明記し、規則を設ける3 | 規程に無い時間帯での提供は「規程どおりに運営されていない」と見られる。営業時間と施設外就労の規則に時間帯を反映し、変更届を出す |
| 職員配置 | 施設外就労を行う日の利用者数に対して報酬算定上必要な人数を配置し、利用者への指導は事業所が行う3 | 早朝・夕方に随行する職員を現実に確保できるか |
| 個別支援計画の事前作成と文書同意 | 施設外就労を含めた個別支援計画を事前に作成し、対象者を計画に規定する3。計画の原案は利用者又はその家族に説明し、文書により利用者の同意を得る(第58条第7項を第202条で準用)6 | 就労先と時間帯を計画に書き、同意を取る。ただし計画は「就労能力や工賃(賃金)の向上及び一般就労への移行に資する」ことが要件で、指定権者は実地調査でこの点を確認する3 |
| 労働者性の実態(B型) | B型利用者は「出欠、作業時間、作業量等が利用者の自由であること」7。詳細は就労継続支援B型の労働者性 | 企業の都合で時間が固定され、休むと外されるような運用は、書面の同意では治癒しない |
利用者の同意は、利用者の自由意思で参加していることを示す証跡として不可欠です。ただし、その器は個別支援計画への記載と文書による同意です。就労先企業の情報を印刷して渡すことは説明資料として有効ですが、それ単体を同意書の代わりにすると、運営指導での説明が弱くなります。
就労継続支援A型(雇用契約あり)の利用者の場合は、上記に加えて雇用契約の所定労働時間との関係が労働法の論点になります。所定労働時間外の就労は労働条件の変更や時間外労働の扱いが問われるため、社会保険労務士等への確認が必要です。
最終的な可否の判断は指定権者に委ねられています。この形の運用を始める前に、運営規程の変更内容と個別支援計画の記載案を持って、自治体に事前相談することを勧めます。
実務チェックリスト#
- 施設外支援・施設外就労とも運営規程に明記されているか(未記載なら変更届から)
- 施設外支援の個別支援計画を1か月ごとに見直し、日報を作成しているか
- 施設外支援の年間実利用日数(180日)を利用者ごとに管理しているか(年度単位・4月リセット)
- 施設外就労先との請負契約書に、完成責任・報酬の算定方法・設備の賃貸借を明記しているか
- 施設外就労の当日、現地に常勤換算で必要数の職員を配置しているか(サビ管の配置計算は施設外就労者を含める)
- 実績記録書類を作成・保存しているか(毎月の提出は不要でも、自治体からの確認に備える)
- 営業時間外に施設外就労を行う場合、運営規程の営業時間と施設外就労の規則にその時間帯を反映し、変更届を出しているか
- 施設外就労の就労先と時間帯を個別支援計画に記載し、文書で利用者の同意を得ているか(B型は出欠・作業時間の自由が実態として保たれているか)
よくある質問#
Q. 施設外就労はなくなるのですか?#
なくなっていません。令和3年度報酬改定で廃止・再編されたのは施設外就労加算(及び移行準備支援体制加算(Ⅱ))であり、同改定の概要では施設外就労そのものは「引き続き実施していく」とされています1。現在は要件を満たす場合に基本報酬を算定する形です4。
Q. 施設外就労加算は復活しますか?#
決まっていません。令和8年6月26日の第57回報酬改定検討チームで、A型事業所全国協議会が令和9年度改定に向けた提言として「施設外就労加算を復活させる」を挙げていますが5、これは関係団体の要望であり、制度として決定したものではありません。
Q. 施設外支援の「180日」はどう数えますか?#
毎年4月1日に始まり翌年3月31日で終わる1年間につき180日間が限度で、利用者が実際に利用した日数の合計で数えます3。職場適応訓練の受講や、障害者短時間トライアルコースで延長の必要性が認められた場合は、180日を超えた提供が可能です3。
Q. 施設外就労の実績報告書は不要になったのですか?#
報酬請求にあたっての毎月の提出は不要になりました(令和6年度改定)。ただし実績記録書類の作成・保存は義務であり、地方公共団体が必要と判断した場合には書類の確認が行われます32。
Q. 自社(法人)の建物で企業の請負作業をすれば施設外就労になりますか?#
なりません。施設外就労は「企業から請け負った作業を当該企業内で行う支援」と定義されており、自法人所有の建物を企業に賃貸してそこで作業する形態は、企業の経営実態がその場所になければ要件を満たさず、基本報酬を算定できません4。
Q. 施設外就労中の職員配置はどう計算しますか?#
施設外就労を行う日の利用者数に対して、報酬算定上必要とされる人数(常勤換算)を現地に配置します。事業所側は施設外就労を行う者を除いた前年度平均利用者数で必要数を計算しますが、サービス管理責任者だけは施設外就労を行う者を含めた平均利用者数に対して配置します3。
Q. 事業所の営業時間外(早朝・夕方)に施設外就労を行えますか?利用者の同意があれば可能ですか?#
営業時間外の施設外就労を禁止する国の規定はありませんが、同意だけで可能になるわけでもありません。運営規程の営業時間と施設外就労の規則にその時間帯を反映すること、その時間帯に必要な職員を配置すること、施設外就労を含めた個別支援計画を事前に作成して文書で同意を得ること、B型では出欠・作業時間の自由が実態として保たれていることの4点が必要です367。可否の最終判断は指定権者が行うため、事前相談を勧めます。
Q. 施設外就労の分だけ利用者を増やせるのですか?#
はい。施設外就労により就労している者と同数の者を、主たる事業所の利用者として新たに受け入れることが可能です。その場合も報酬単価は主たる事業所の利用定員に基づくものを適用します3。
制度上の根拠#
- 就労系留意事項通知「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」第二(施設外支援・施設外就労)3
- 令和6年度報酬改定の概要(実績報告書の提出義務廃止・施設外支援の事務処理簡素化)2
- 令和6年度報酬改定Q&A Vol.8 問1(施設外就労先の要件)4
- 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(施設外就労に係る加算の廃止・再編)1
- 第57回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム ヒアリング資料(令和9年度改定に向けた関係団体の提言)5
Footnotes#
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厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和3年2月4日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)p.41 https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000743384.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」p.57〜59 https://www.mhlw.go.jp/content/001216035.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(障障発0331第2号・令和7年3月31日改正版)p.30〜33 https://www.mhlw.go.jp/content/001473458.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16 ↩17 ↩18 ↩19 ↩20 ↩21 ↩22 ↩23 ↩24 ↩25
-
厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.8」(令和7年3月31日)p.2 https://www.mhlw.go.jp/content/001471548.pdf ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6
-
厚生労働省「第57回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム ヒアリング資料4(A型事業所全国協議会)」(令和8年6月26日)p.13 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001715690.pdf ↩ ↩2 ↩3
-
指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第58条(個別支援計画の作成等)第7項、第89条(運営規程)第3号、第202条(就労継続支援B型における準用)https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 ↩ ↩2 ↩3
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厚生労働省「就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について」(障障発第1002003号・平成18年10月2日)1(2)ア https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4762&dataType=1&pageNo=1 ↩ ↩2