多機能型事業所とは#
多機能型事業所とは、複数の障害福祉サービスを一体的に運営する事業所です1。1つの事業所で就労継続支援A型とB型を併設する、就労移行支援と就労継続支援B型を組み合わせる等の運営形態が可能です。
組み合わせ可能なサービスの例:
| パターン | サービスの組合せ | 合計定員の目安 |
|---|---|---|
| A型 + B型 | 就労継続支援A型 + B型 | 各10人以上(合計20人以上) |
| 移行 + B型 | 就労移行支援 + 就労継続支援B型 | 各10人以上(合計20人以上) |
| 移行 + A型 | 就労移行支援 + 就労継続支援A型 | 各10人以上(合計20人以上) |
| 3サービス併設 | 移行 + A型 + B型 | 各6人以上(合計20人以上) |
| 生活介護 + B型 | 生活介護 + 就労継続支援B型 | 各10人以上(合計20人以上) |
多機能型のメリット#
経営上のメリット#
- 人員の効率的配置:管理者・サービス管理責任者を兼務できるため、人件費を抑えられる
- 設備の共用:相談室、多目的室、トイレ・洗面所等を共用できる
- 利用者の柔軟な移行:A型からB型、B型から移行支援等への移行がスムーズ
- 経営リスクの分散:複数サービスの収入で経営が安定しやすい
支援上のメリット#
- 利用者の状態変化に対応:体調や能力に応じてサービスを切り替えられる
- 段階的な支援:B型→A型→一般就労のステップアップを同一事業所内で実現
- 情報共有の円滑化:同一法人・同一拠点で支援記録を共有できる
定員に関するルール#
基本ルール#
多機能型事業所の定員に関する主なルールは以下の通りです1。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 合計定員 | 20人以上(原則) |
| 各サービスの定員 | 各6人以上(合計20人以上の場合) |
| 2サービスの場合 | 各10人以上が標準 |
| 3サービス以上 | 各6人以上で合計20人以上 |
定員の具体例#
A型10人 + B型10人 = 合計20人 → ✅ 適合
移行6人 + A型6人 + B型8人 = 合計20人 → ✅ 適合
A型8人 + B型8人 = 合計16人 → ❌ 合計20人未満で不適合
人員配置基準#
兼務可能な職種#
多機能型事業所では、以下の職種について兼務が認められています1。
| 職種 | 兼務の可否 | 条件 |
|---|---|---|
| 管理者 | ✅ 兼務可 | 管理業務に支障がない範囲 |
| サービス管理責任者 | ✅ 兼務可 | 利用者60人以下で1名以上(全サービス通算) |
| 職業指導員 | ⚠️ 原則不可 | 常勤換算で各サービスの基準を満たすこと |
| 生活支援員 | ⚠️ 原則不可 | 同上 |
| 就労支援員 | ⚠️ 原則不可 | 就労移行支援固有の職種 |
サービス管理責任者の兼務#
サービス管理責任者は、一体的に事業を行う多機能型事業所のうち厚生労働大臣が定めるものを一の事業所とみなし、利用者数の合計に応じて配置します2。
| 利用者数の合計 | 置くべきサビ管の数 |
|---|---|
| 60以下 | 1以上 |
| 61以上 | 1に、60を超えて40又はその端数を増すごとに1を加えて得た数以上 |
うち1人以上は常勤であることが必要です2。61人以上の場合は「40人ごとに1人追加」であり、たとえば利用者101人なら2人以上(60超過分41人=40の端数を1回増す)になります。
なお「一の事業所とみなす」対象は厚生労働大臣が定めるものとされており、告示第544号は、配置されるサビ管が2以上のサービスに係るサビ管の要件に該当する多機能型事業所をこれに当てると定めています3。組み合わせるサービス両方の実務経験要件を満たす人でなければ、この特例は使えません(サビ管の実務経験要件 判定ガイド)。
定員20人未満なら常勤要件が緩和される#
一体的に事業を行う多機能型事業所の利用定員数の合計が20人未満である場合は、各サービスの常勤要件にかかわらず、置くべき従業者(医師及びサービス管理責任者を除く)のうち1人以上を常勤とすれば足ります2。
小規模な多機能型では、サービスごとに常勤者を置く必要がない、という趣旨の特例です。
直接処遇職員の配置#
職業指導員・生活支援員等の直接処遇職員は、各サービスの基準をそれぞれ満たす必要があります。
例:A型10人(10:1)+ B型20人(10:1)の場合
- A型:常勤換算1.0人以上
- B型:常勤換算2.0人以上
- 合計3.0人以上の直接処遇職員が必要
ただし、実際の配置にあたっては、同一時間帯に複数サービスを提供する場合でも、利用者の支援に支障がなければ、一定の範囲で柔軟な運用が認められる場合があります。
設備基準#
条文は「兼用できる」とだけ定めている#
設備の特例は1条だけで、次の内容です4。
多機能型事業所については、サービスの提供に支障を来さないよう配慮しつつ、一体的に事業を行う他の多機能型事業所の設備を兼用することができる。
設備の種類ごとの可否は条文に書かれていません。 訓練・作業室、相談室、洗面所・トイレ、多目的室、事務室のいずれについても、条文上の判断基準は「サービスの提供に支障を来さないよう配慮」の一点です。
したがって「相談室は共用可、訓練室は区分が必要」といった設備別のルールは国の基準にはなく、指定権者の運用によります。指定申請前に、平面図とあわせて事前相談で確認してください。
なお訓練・作業室の面積基準についても、改正省令は「何㎡必要である等の具体的な面積の基準までは明示していない」としています(A型の開業ガイド)。
指定申請のポイント#
単独申請との違い#
多機能型事業所の指定申請では、以下の点に注意が必要です。
- 申請書類はサービスごとに作成するが、共通部分は一括で提出できる
- 運営規程はサービスごとに作成する(共通部分は統合可)
- 平面図は各サービスの使用エリアを色分け等で明示する
- 人員配置表はサービスごとの配置と兼務状況を明記する
事業計画書の書き方#
多機能型の事業計画書では、以下を明確にします。
- 各サービスの想定利用者像と利用者数の見込み
- サービス間の利用者の移行計画(B型→A型→一般就労等)
- 収支計画はサービスごとに分けて作成
- 人員配置の兼務状況と常勤換算数
運営上の留意事項#
利用者のサービス変更#
多機能型事業所内でサービスを変更する場合(例:B型からA型へ)は、以下の手続きが必要です。
- 市町村への支給決定の変更申請
- 個別支援計画の見直し
- サービス等利用計画の変更(相談支援事業所との連携)
報酬請求の注意#
多機能型事業所では、同一日に同一利用者が2つのサービスを利用することはできません。日単位でいずれかのサービスを選択して利用する形となります。
会計処理・記録管理#
多機能型事業所では、サービスごとに会計を区分して管理する必要があります。具体的には以下の点に注意してください。
- 収入の区分:各サービスの報酬収入はサービスごとに記録する
- 支出の按分:共通経費(家賃、水光熱費等)はサービスごとに合理的な基準で按分する
- 利用実績の管理:日ごとに利用者がどのサービスを利用したかを正確に記録する
- 個別支援計画:サービスごとに作成・管理する(利用者がサービスを変更する場合は計画の見直しが必要)
よくある質問#
Q. 途中から多機能型に変更できますか?#
既存のB型事業所にA型を追加する等、途中から多機能型に変更することは可能です。ただし、追加するサービスの指定申請と、既存サービスの変更届が必要となります。
Q. 多機能型と単独型で報酬に差はありますか?#
基本報酬に差はありません。ただし、各サービスの定員規模に応じた報酬区分が適用されるため、小規模な定員の場合は単位数が高くなる場合があります。
Q. A型とB型で異なる生産活動を行う必要がありますか?#
同じ生産活動を行うことは可能ですが、A型は雇用契約に基づく就労であり、B型は工賃支払いによる活動です。契約形態と賃金/工賃の取扱いは明確に区分する必要があります。
Footnotes#
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)多機能型に関する特例 ↩ ↩2 ↩3
-
指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第215条(従業者の員数等に関する特例)第1項・第2項 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 ↩ ↩2 ↩3
-
厚生労働省「指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等」(平成18年厚生労働省告示第544号)第二号 ↩
-
前掲省令 第216条(設備の特例)https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171 ↩