令和8年6月施行 — 障害福祉報酬改定の3つのポイント#
令和8年6月1日から、障害福祉サービス等報酬の臨時改定が施行されます。今回の改定は「物価高騰への対応」と「福祉人材の確保」を目的としており、以下の 3つの柱 で構成されています。12
- 福祉・介護職員等処遇改善加算の加算率引上げ(全サービス対象)
- 就労継続支援B型の基本報酬区分の見直し(中間区分の新設)
- 新規事業所に係る報酬の適正化(基本報酬の引下げ特例)
本記事では、就労系サービス(就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援)に焦点を当てて、改定内容を解説します。
処遇改善加算の加算率引上げ#
改定の概要#
令和6年度改定で一本化された「福祉・介護職員等処遇改善加算」の加算率が、物価上昇と人材確保の困難さを踏まえて引き上げられました。あわせて、生産性向上に取り組む事業所への上乗せ区分(「ロ」区分)が新設されています。1
新加算率テーブル(就労系5サービス)#
以下が令和8年6月施行の確定加算率です。1
| サービス | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 就労選択支援 | 11.5% | 11.9% | 11.3% | 11.7% | 9.8% | 8.1% |
| 就労移行支援 | 11.5% | 11.9% | 11.3% | 11.7% | 9.8% | 8.1% |
| 就労継続支援A型 | 10.8% | 11.2% | 10.6% | 11.0% | 9.1% | 7.5% |
| 就労継続支援B型 | 10.5% | 10.9% | 10.3% | 10.7% | 8.8% | 7.4% |
| 就労定着支援 | 11.5% | 11.9% | — | — | 9.8% | 8.1% |
※ 就労定着支援はⅡイ・Ⅱロの算定がありません(0/1000)。
※ 就労選択支援と就労移行支援は同一の加算率です。
「イ」と「ロ」の違い#
今回の改定で、全ての加算区分に 「イ」と「ロ」の2種類 が設けられました。1
| 区分 | 要件 | 差分 |
|---|---|---|
| イ(従来型) | 処遇改善加算の基本要件を満たす | — |
| ロ(上乗せ型) | 上記に加え、生産性向上・協働化に係る取組を実施 | +0.4pt |
「イ」と「ロ」は、加算額のうち基本給等への配分割合によって決まります。加算額の 2/3以上を基本給又は毎月支払われる手当 の改善に充てている場合は「イ」、それ以外の場合は「ロ」で算定します。1
※ Ⅲ・Ⅳには「ロ」区分はありません。従来どおり1区分のみです。
施設版(指定障害者支援施設)の加算率#
指定障害者支援施設でサービスを実施する場合、通常版とは異なる加算率が適用されます。特に Ⅱイ・Ⅱロは適用なし(0/1000) です。1
| サービス | Ⅰイ | Ⅰロ | Ⅱイ | Ⅱロ | Ⅲ | Ⅳ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 就労継続支援B型(施設) | 11.6% | 12.0% | — | — | 9.8% | 8.1% |
| 就労継続支援A型(施設) | 11.7% | 12.1% | — | — | 9.9% | 8.1% |
| 就労移行支援(施設) | 11.9% | 12.3% | — | — | 10.1% | 8.3% |
※ 施設版のⅠイ・Ⅰロは通常版より高い加算率が設定されています。施設入所者への支援に係る追加的なコストを考慮したものです。
令和6年度からの引上げ幅#
令和6年度改定時の加算率と比較した引上げ幅は以下のとおりです。2
| サービス | 令和6年度 Ⅰ | 令和8年6月 Ⅰイ | Ⅰロ | 引上げ幅(イ) | 引上げ幅(ロ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | 10.4% | 11.5% | 11.9% | +1.1pt | +1.5pt |
| 就労継続支援A型 | 9.7% | 10.8% | 11.2% | +1.1pt | +1.5pt |
| 就労継続支援B型 | 9.4% | 10.5% | 10.9% | +1.1pt | +1.5pt |
| 就労定着支援 | 10.4% | 11.5% | 11.9% | +1.1pt | +1.5pt |
全サービスで イ区分+1.1ポイント、ロ区分+1.5ポイント の引上げです。
B型 基本報酬の中間区分新設#
改定の背景 — 「クリフ問題」への対応#
令和6年度改定でB型の基本報酬は「区分基準額」(利用者の月額工賃÷利用日数)による評価方式に移行しました。しかし、区分間の単位数の差が大きく、わずかな基準額の違いで報酬が大きく変動する(いわゆる「クリフ問題」)が課題となっていました。2
旧5区分 → 新9区分への変更#
既存の5区分の間に 4つの中間区分 を新設し、合計 9区分 になりました。2
| 区分 | 区分基準額の範囲 | 備考 |
|---|---|---|
| 区分1 | 4万円以上 | 変更なし |
| 区分1-2 | 3万5千円以上4万円未満 | 新設 |
| 区分2 | 3万円以上3万5千円未満 | 基準変更 |
| 区分2-3 | 2万5千円以上3万円未満 | 新設 |
| 区分3 | 2万円以上2万5千円未満 | 基準変更 |
| 区分3-4 | 1万5千円以上2万円未満 | 新設 |
| 区分4 | 1万円以上1万5千円未満 | 基準変更 |
| 区分4-5 | 5千円以上1万円未満 | 新設 |
| 区分5 | 5千円未満 | 変更なし |
単位数の比較(定員20人以下の場合)#
配置基準別の単位数比較です。1
| 区分 | サービス費(Ⅰ) 7.5:1 | サービス費(Ⅱ) 10:1 | 施設版 |
|---|---|---|---|
| 区分1(4万円以上) | 837単位 | 748単位 | 682単位 |
| 区分1-2(3万5千円以上) | 812単位 | 726単位 | 662単位 |
| 区分2(3万円以上) | 758単位 | 669単位 | 611単位 |
| 区分2-3(2万5千円以上) | 738単位 | 649単位 | 594単位 |
| 区分3(2万円以上) | 726単位 | 637単位 | 572単位 |
| 区分3-4(1万5千円以上) | 705単位 | 618単位 | 557単位 |
| 区分4(1万円以上) | 673単位 | 584単位 | 532単位 |
| 区分4-5(5千円以上) | 590単位 | 537単位 | 490単位 |
| 区分5(5千円未満) | — | — | — |
※ 上記は定員20人以下の場合です。全定員パターン(20人以下/21-40人/41-60人/61-80人/81人以上)の完全な単位数一覧は、別記事「就労継続支援B型 基本報酬 全単位数一覧表」をご覧ください。
中間区分の影響試算#
中間区分が新設されたことで、報酬の変動がより緩やかになります。
例:定員20人以下・7.5:1配置、区分基準額が3万8千円の事業所の場合
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 該当区分 | 区分2(3万5千円以上) | 区分1-2(3万5千円以上4万円未満) |
| 単位数 | 641単位 | 672単位 |
| 差額 | — | +31単位/日 |
中間区分は区分基準額の判定結果に基づいて 自動的に適用 されるため、事業所が新たに届出を行う必要はありません。2
新規事業所に係る報酬の適正化#
対象サービスと引下げ率#
開設間もない事業所について、支援実績が蓄積されていない段階で高い報酬が算定されるケースへの対応として、基本報酬の引下げ措置が設けられます。2
| 対象サービス | 引下げ率 | 実質引下げ率 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 984/1000 | ▲1.6% |
| 共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型) | 972/1000 | ▲2.8% |
| 児童発達支援 | 988/1000 | ▲1.2% |
| 放課後等デイサービス | 982/1000 | ▲1.8% |
※ 就労系サービスで対象となるのは B型のみ です。A型・移行・定着支援・選択支援は対象外です。
配慮措置(引下げ対象外となるケース)#
以下に該当する場合は、引下げ措置が適用されません(従前の報酬単価で算定)。2
重度障害者への配慮:
- 医療連携体制加算(Ⅳ)を算定する事業所
- 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(Ⅰ)または(Ⅱ)を算定する事業所
- 高次脳機能障害者支援体制加算を算定する事業所
地域への配慮:
- 離島・中山間地域(特別地域加算の対象地域)にある事業所
- 自治体が客観的に必要であるとして設置する事業所(公募による設置、自治体からの補助を受けた設置等)
その他 — 就労系サービスへの影響まとめ#
| サービス | 基本報酬 | 処遇改善加算 | 新規事業所引下げ |
|---|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 区分見直し | 引上げ | 対象 |
| 就労継続支援A型 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
| 就労移行支援 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
| 就労定着支援 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
| 就労選択支援 | 変更なし | 引上げ | 対象外 |
各サービスとも、処遇改善加算の加算率引上げは共通して適用されます。基本報酬の区分見直しと新規事業所引下げは B型のみ が対象です。