身体拘束廃止未実施減算とは#
身体拘束廃止未実施減算は、障害福祉サービス事業所が身体拘束等の適正化に必要な措置を講じていない場合に適用される減算です。
令和6年度の報酬改定により、従来の一律5単位/日の減算から、所定単位数に対する割合減算へと大幅に見直されました1。この改定は、身体拘束の適正化をより実効性のある形で推進することを目的としています。
減算の対象となるのは、身体拘束等の適正化のために求められる4つの措置のいずれかを実施していない場合です。事業所の規模やサービス類型に応じて減算率が異なるため、自事業所がどの区分に該当するかを正確に把握しておく必要があります。
減算率(サービス類型別)#
令和6年度改定により、減算率はサービス類型に応じて以下のとおり設定されています1。
| サービス類型 | 対象サービス(例) | 減算率 |
|---|---|---|
| 施設・居住系サービス | 障害者支援施設、療養介護、障害児入所施設、共同生活援助(GH)、宿泊型自立訓練 | 所定単位数の**10%**減算 |
| 訪問・通所系サービス | 居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所、就労継続支援A型・B型、児童発達支援、放課後等デイサービスなど | 所定単位数の**1%**減算 |
改定前は一律5単位/日の減算でしたが、施設・居住系サービスでは所定単位数の10%と大幅に引き上げられました。これは、入所・居住型の施設では利用者が24時間生活しており、身体拘束が行われた場合の影響が特に大きいことを踏まえた設定です1。
減算を回避するための4つの措置#
身体拘束廃止未実施減算を回避するためには、以下の4つの措置をすべて実施する必要があります2。いずれか1つでも欠けていれば減算の対象となります。
1. 身体拘束等の記録#
やむを得ず身体拘束を行う場合には、以下の事項を記録しなければなりません2。
- 身体拘束の態様(どのような拘束を行ったか)
- 身体拘束の時間(開始時刻・終了時刻)
- 身体拘束を行った理由(三要件への該当根拠)
- 利用者の心身の状況
記録は利用者ごとに作成し、適切に保管しておく必要があります。
2. 身体拘束適正化検討委員会の設置・開催#
身体拘束等の適正化を検討するための委員会を設置し、年1回以上定期的に開催しなければなりません2。実務上は3か月に1回以上の開催が推奨されています。
委員会で検討すべき主な事項は以下のとおりです。
- 身体拘束の実施状況の把握と分析
- 身体拘束を廃止・軽減するための具体的方策
- 指針の見直し・改善
- 研修内容の検討
委員会の検討結果は、すべての従業者に周知徹底する必要があります。
3. 指針の整備#
身体拘束等の適正化のための指針を整備しなければなりません2。指針には以下の内容を盛り込むことが求められます。
- 事業所における身体拘束等の適正化に関する基本的な考え方
- 身体拘束適正化検討委員会の設置および運営に関する事項
- 身体拘束等の適正化のための研修に関する事項
- 身体拘束を行う場合の手続きや報告に関する事項
- 利用者・家族への説明に関する事項
4. 研修の実施#
従業者に対する身体拘束等の適正化のための研修を、年1回以上定期的に実施しなければなりません2。新規採用時の研修も含め、すべての従業者が受講する体制を整えることが重要です。
研修の実施結果は、すべての従業者に周知徹底する必要があります。
身体拘束の三要件#
身体拘束は原則として禁止されていますが、利用者本人または他の利用者の生命・身体を保護するため緊急やむを得ない場合に限り、例外的に認められています。その際には以下の三要件すべてを満たすことが必要です2。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 切迫性 | 利用者本人または他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高い |
| 非代替性 | 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない |
| 一時性 | 身体拘束その他の行動制限が一時的なものである |
三要件を満たす場合であっても、身体拘束の態様・時間・理由等を記録し、できる限り早期に解除する努力が求められます。
実務上の注意点#
身体拘束廃止未実施減算を確実に回避するため、以下の点に留意してください。
- 4つの措置はすべて実施が必要です。 「委員会は開催しているが指針を整備していない」など、一部でも未実施であれば減算対象となります
- 委員会の開催記録を必ず残してください。 開催日時、出席者、議題、決定事項を記録し、運営指導(実地指導)に備えて保管しておくことが重要です
- 研修の受講記録を整備してください。 研修日時、参加者名簿、研修内容の記録を作成し、全員が受講したことを証明できるようにしておく必要があります
- 指針は定期的に見直してください。 委員会の検討結果を踏まえ、内容の更新を行うことが推奨されます
- 施設・居住系は10%の減算です。 改定前の5単位/日と比べて大幅な増額となっており、経営への影響が非常に大きいため、対応を怠らないよう注意が必要です
よくある質問#
Q. 身体拘束を一切行っていない場合でも、4つの措置は必要ですか?#
はい、必要です。身体拘束廃止未実施減算は、実際に身体拘束を行っているかどうかにかかわらず、適正化のための措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施、記録体制の整備)を講じていない場合に適用されます2。
Q. 委員会の開催頻度は年1回で足りますか?#
制度上の最低基準は年1回以上ですが、実務上は3か月に1回以上の開催が推奨されています2。身体拘束の実施状況や課題の変化に応じて、適切な頻度で開催することが望ましいです。
Q. 減算率はいつから変わりましたか?#
令和6年4月1日施行の報酬改定により変更されました。改定前は一律5単位/日でしたが、改定後は施設・居住系サービスで所定単位数の10%、訪問・通所系サービスで所定単位数の1%の割合減算に見直されています1。
Q. 研修は外部講師を招く必要がありますか?#
外部講師の招聘は義務ではありません。管理者や経験のある職員が講師を務める内部研修でも要件を満たします。ただし、研修内容の充実を図るため、外部の専門家を活用することも有効です。
Q. 運営指導で未実施が指摘された場合、遡って減算されますか?#
運営指導等で措置の未実施が確認された場合、未実施の状態であった期間について遡及して減算が適用される可能性があります。日頃から記録を整備し、4つの措置が継続的に実施されていることを証明できるようにしておくことが重要です。