就労移行支援の人員配置基準とは#
就労移行支援事業所を運営するうえで、人員配置基準の遵守は指定の取得・維持に不可欠です。基準を満たさない場合は人員欠如減算が適用され、報酬が大幅に減額されます。
この記事では、就労移行支援事業所に必要な職種と配置人数、令和6年度改定による定員規模の見直し、常勤換算の計算方法、そしてよくある質問までを網羅的に解説します。
必置職種と配置基準の一覧#
就労移行支援事業所では、以下の職種を配置しなければなりません1。
| 職種 | 配置基準 | 常勤要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 1名 | 兼務可(管理業務に支障がない場合)1 |
| サービス管理責任者 | 利用者60名以下:1名以上 | 1名以上は常勤1 |
| 職業指導員 | 職業指導員+生活支援員の合計で利用者数÷6以上(常勤換算) | 職業指導員または生活支援員のうち1名以上は常勤1 |
| 生活支援員 | 職業指導員+生活支援員の合計で利用者数÷6以上(常勤換算) | 同上 |
| 就労支援員 | 利用者数÷15以上(常勤換算)2 | 常勤要件なし |
管理者#
事業所の運営全体を統括する責任者です。管理業務に支障がない場合に限り、サービス管理責任者や他の職種との兼務が認められています1。専ら管理業務に従事する必要はありませんが、兼務する場合は管理業務が疎かにならないよう注意が必要です。
サービス管理責任者#
個別支援計画の作成やサービス内容の管理を担う職種です1。利用者数が60名以下の場合は1名以上、60名を超える場合は60名を超えて40名またはその端数ごとに1名を追加配置する必要があります1。1名以上は常勤でなければなりません。
サービス管理責任者には、実務経験と相談支援従事者初任者研修・サービス管理責任者研修の修了が求められます3。
職業指導員・生活支援員#
職業指導員と生活支援員は、利用者に対する訓練指導や生活面の支援を行う職種です。両者の合計人数が利用者数を6で除した数以上(常勤換算)であることが求められます1。
重要なポイントは以下のとおりです。
- 職業指導員・生活支援員はそれぞれ最低1名以上の配置が必要です1
- 両職種を合わせた人数のうち、1名以上は常勤でなければなりません1
- 配置人数は「6:1」の基準で、定員20名の場合は常勤換算で合計3.3名以上が必要です
就労支援員#
就労支援員は、利用者の就職活動の支援や職場開拓、就労後の職場定着支援に向けた連絡調整を行う職種です2。配置基準は利用者数を15で除した数以上(常勤換算)です2。定員20名の場合は常勤換算で1.3名以上が必要です。
就労支援員には常勤要件はありませんが、利用者の就職に直結する支援を担うため、十分な配置が望まれます。
定員規模の計算例#
定員20名の事業所を例に、最低限必要な人員数を計算します。
| 職種 | 計算式 | 必要人数(常勤換算) |
|---|---|---|
| 管理者 | — | 1名 |
| サービス管理責任者 | 利用者60名以下 | 1名以上 |
| 職業指導員+生活支援員 | 20 ÷ 6 = 3.33… | 3.4名以上 |
| 就労支援員 | 20 ÷ 15 = 1.33… | 1.4名以上 |
配置人数を計算する際の利用者数は、原則として前年度の平均利用者数を使用します1。新規開設の場合は、指定申請時の利用定員を基準とします。
令和6年度改定:定員10人以上への見直し#
令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定により、就労移行支援事業所の利用定員規模が見直されました4。
| 項目 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 利用定員の下限 | 20人以上(離島等は10人以上) | 10人以上4 |
この改定は、地域の実情に応じた事業所運営を可能にするためのものです。人口の少ない地域や都市部でも、より小規模な体制から就労移行支援事業を開始できるようになりました4。
定員10名の場合の人員配置#
定員が10名に縮小されても、職種ごとの配置基準(6:1、15:1等)自体は変更されていません。定員10名の場合に必要な人員数は以下のとおりです。
| 職種 | 計算式 | 必要人数(常勤換算) |
|---|---|---|
| 管理者 | — | 1名 |
| サービス管理責任者 | 利用者60名以下 | 1名以上 |
| 職業指導員+生活支援員 | 10 ÷ 6 = 1.66… | 1.7名以上 |
| 就労支援員 | 10 ÷ 15 = 0.66… | 0.7名以上 |
小規模事業所では管理者とサービス管理責任者の兼務が実務上重要となります。兼務の可否については後述のFAQをご確認ください。
常勤換算方法の解説#
人員配置基準を満たしているかどうかは「常勤換算方法」で判定します1。
計算式#
常勤換算数 = 対象職員の月間勤務延べ時間数 ÷ 常勤職員が勤務すべき月間時間数
計算のステップ#
- 事業所で定める常勤職員の1週あたりの勤務時間数を確認します(32時間以上で設定)1
- 月間の勤務すべき時間数を算出します(例:週40時間 × 4.35週 = 174時間)
- 各職員の実際の月間勤務時間を合計します(常勤・非常勤を問わず合算)
- 合計時間数を月間の勤務すべき時間数で割ります
- 小数点第2位以下を切り捨てます5
計算例#
事業所の常勤勤務時間が**週40時間(月174時間)**の場合で、職業指導員と生活支援員の配置を計算します。
| 職員 | 雇用形態 | 月間勤務時間 |
|---|---|---|
| Aさん(職業指導員) | 常勤 | 174時間 |
| Bさん(生活支援員) | 常勤 | 174時間 |
| Cさん(生活支援員) | パート | 87時間 |
常勤換算数 =(174 + 174 + 87)÷ 174 = 2.5
定員15名の場合の基準は 15 ÷ 6 = 2.5 ですので、この配置であれば基準を満たします。
常勤換算の注意点#
- 常勤換算はサービスごとに算出するため、他事業と兼務する時間は含めません1
- 産休・育休中の職員は常勤換算数に含めることができませんが、代替職員を配置すれば問題ありません
- 毎月の実績に基づいて算出し、記録を保存してください
人員欠如減算のリスク#
人員配置基準を満たさない場合は、人員欠如減算が適用されます5。
ただし、欠如した人数が基準の10%以内の場合は、欠如した月の翌々月から減算が開始されます5。10%を超える場合は翌月から適用されます5。
減算は全利用者に対して適用されるため、事業所の経営に深刻な影響を与えます。職員の退職予定を把握したら、早めに採用活動を開始することが重要です。
サービス管理責任者の欠如#
サービス管理責任者が欠如した場合は、上記とは別の減算が適用されます。欠如が生じた翌々月から所定単位数の70%を算定し、5ヶ月目以降は50%を算定します5。サービス管理責任者の確保は特に重要です。
よくある質問#
Q. 管理者とサービス管理責任者は兼務できますか?#
管理業務に支障がない場合に限り、管理者はサービス管理責任者との兼務が認められています1。特に定員10名程度の小規模事業所では、管理者がサービス管理責任者を兼務するケースが一般的です。ただし、管理業務が疎かになっていると判断された場合は、実地指導(運営指導)で改善を求められることがあります。
Q. 職業指導員と就労支援員を1人の職員が兼務することはできますか?#
職業指導員と就労支援員は別の職種として位置づけられているため、同一時間帯に両方の職種として常勤換算に算入することはできません1。ただし、曜日や時間帯を分けて両職種の業務を行うことは可能です。その場合、それぞれの職種の勤務時間としてカウントします。
Q. 職員が急に退職した場合、すぐに減算されますか?#
人員欠如が基準の10%以内であれば、減算の適用は欠如月の翌々月からです5。つまり、約2ヶ月間の猶予があります。この間に代替職員を確保すれば減算を回避できます。10%を超える欠如の場合は翌月から適用されるため、大幅な欠員が生じないよう日頃から準備しておくことが重要です。
Q. 常勤換算で端数が出た場合はどう処理しますか?#
常勤換算数は小数点第2位以下を切り捨てます5。一方、基準人数の計算(例:20÷6=3.33…)は小数点第2位以下を切り上げます。したがって、基準人数は3.4名以上となり、実際の常勤換算数がこれを上回る必要があります。
Footnotes#
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厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)第6章 就労移行支援 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15 ↩16
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厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(留意事項通知) ↩ ↩2 ↩3
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厚生労働省「サービス管理責任者等研修制度について」 ↩
-
厚生労働省「障害福祉サービス等報酬の解釈通知」(留意事項通知)人員欠如減算の取扱い ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9