A型

就労継続支援A型の開業ガイド|法人設立から指定申請までの全手順を解説

公開: 2026年6月30日更新: 2026年6月30日

就労継続支援A型とは#

就労継続支援A型は、一般企業での就労が困難な障害者に対し、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動を通じて必要な知識・能力の向上のための訓練を行う障害福祉サービスである1

B型との最大の違いは「雇用契約を締結する」点にあり、利用者には最低賃金以上の賃金を支払う義務が生じる。

項目A型B型(参考)
雇用契約あり(必須)なし
賃金/工賃最低賃金以上工賃(月額平均3,000円以上が目安)
利用定員10人以上20人以上
対象者65歳未満(原則)年齢制限なし
報酬体系スコア方式(7項目評価)平均工賃月額方式

開業までの全体スケジュール#

A型事業所の開業には、法人設立から指定取得まで6か月〜1年程度の準備期間が必要である。

時期タスク
12〜10か月前事業計画の策定、法人設立の準備
10〜8か月前法人設立(定款認証・設立登記)
8〜6か月前物件の確保、設備の整備、人員の採用
6〜4か月前事前相談(指定権者への相談)
4〜3か月前指定申請書類の作成・提出
3〜2か月前審査・現地確認
1か月前指定通知の受領
開業サービス提供開始

ステップ1:法人の設立#

障害福祉サービスの事業者指定を受けるためには、法人格が必要である1。個人事業主では指定を受けられない。

法人形態の選択#

法人形態設立費用設立期間特徴
株式会社約25万円2〜3週間信用力が高い、資金調達しやすい
合同会社約10万円1〜2週間設立費用が安い、意思決定が速い
一般社団法人約12万円2〜3週間非営利目的で信頼性が高い
NPO法人約0円3〜6か月設立費用が不要だが、認証に時間がかかる
社会福祉法人高額6か月〜1年税制優遇あり、設立要件が厳しい

定款の事業目的には、必ず「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」を含める必要がある。


ステップ2:事業計画の策定#

A型事業所は雇用契約に基づくサービスであるため、B型以上に綿密な事業計画が求められる。

収支計画のポイント#

A型の事業計画では、以下の2つの収支を分けて計画する必要がある。

  • 障害福祉サービスの収支:基本報酬(スコア方式)+加算による収入
  • 生産活動の収支:利用者の生産活動から生じる売上と、賃金・材料費等の支出

A型では生産活動収支が赤字になることが原則禁止されており、赤字が継続するとスコア評価に大きく影響する2

生産活動の選定#

A型では利用者に最低賃金以上を支払う必要があるため、十分な売上が見込める生産活動を選定することが極めて重要である。

代表的な生産活動の例:

  • 清掃業務(ビルメンテナンス、施設清掃)
  • 飲食業(カフェ、弁当製造)
  • 農業(施設園芸、農産物加工)
  • ITサービス(データ入力、Web制作)
  • 製造業(軽作業、組立、パッケージング)

ステップ3:物件の確保と設備基準#

設備基準#

A型事業所として指定を受けるためには、以下の設備を備える必要がある1

設備要件
訓練・作業室利用者1人あたりの面積が十分であること(目安:3㎡以上/人)
相談室プライバシーに配慮した個室またはパーティション区画
洗面所・トイレ利用者の特性に応じたバリアフリー対応
多目的室休憩や食事に使用できるスペース

立地の選定#

  • 公共交通機関でアクセスしやすい場所が望ましい
  • 送迎を実施する場合は駐車スペースも確保する
  • 近隣住民への説明を事前に行うこと(自治体によっては必須)

ステップ4:人員配置基準#

A型事業所の人員配置基準は以下の通りである3

職種配置基準要件
管理者1名以上(兼務可)管理業務に支障がなければ他の職務との兼務可
サービス管理責任者利用者60人以下で1名以上実務経験+研修修了が必要
職業指導員総数で利用者10:1または7.5:1以上生産活動の指導を担当
生活支援員(職業指導員と合算)日常生活上の支援を担当

配置上の注意点#

  • 職業指導員と生活支援員の合計で常勤換算により配置基準を満たすこと
  • 職業指導員・生活支援員のそれぞれ1名以上は常勤であること
  • サービス管理責任者は常勤かつ専従が原則
  • 10:1配置と7.5:1配置では報酬単価が異なる(7.5:1の方が高い)

ステップ5:指定申請の手続き#

事前相談#

多くの自治体では、正式な指定申請の前に事前相談を求めている。事前相談では以下の内容を確認する。

  • 事業計画の概要と実施場所
  • 人員配置の見込み
  • 生産活動の内容と収支見込み
  • 物件の適合性(用途地域、建築基準法適合)

必要書類#

指定申請に必要な主な書類は以下の通りである1

書類内容
指定申請書事業所の基本情報
定款の写し法人の事業目的の確認
登記事項証明書法人の登記情報
事業計画書事業の概要・収支計画
平面図事業所の配置図
設備・備品一覧訓練室・相談室等の設備
人員配置表職員の配置計画
資格証明書サービス管理責任者等の資格
運営規程サービスの提供方法等
賃貸借契約書物件の使用権限を証明
損害賠償保険証書利用者の事故等に備えた保険
協力医療機関との契約書緊急時の医療対応

審査から指定まで#

  • 書類の提出後、自治体による書類審査現地確認が行われる
  • 審査期間は自治体により異なるが、1〜3か月程度が一般的
  • 指定日は原則として毎月1日(自治体による)

ステップ6:報酬体系の理解#

A型の基本報酬はスコア方式で決定される。7つの評価項目の合計スコアにより報酬区分が決まる4

評価項目配点範囲
労働時間5〜90点
生産活動-20〜60点
多様な働き方0〜15点
支援力向上0〜15点
地域連携活動0〜10点
経営改善計画-50〜0点
利用者の知識・能力向上0〜10点

スコアの合計に応じて7段階の報酬区分が設定されており、新規指定事業所は区分(五)(80点以上105点未満)とみなす経過措置がある4


A型特有の注意事項#

雇用契約と労働関連法規#

A型事業所は利用者と雇用契約を締結するため、以下の労働関連法規が適用される。

  • 労働基準法:労働時間・休日・休憩の規定
  • 最低賃金法:地域別最低賃金以上の支払義務
  • 雇用保険法:週20時間以上の勤務で加入義務
  • 社会保険:一定の要件で加入義務
  • 労災保険:全利用者が対象

生産活動収支の管理#

A型では生産活動収支の黒字維持が重要であり、3年連続黒字で60点、3年連続赤字で-20点というスコア評価が適用される2

65歳以上の利用者#

A型の利用対象は原則として65歳未満であるが、65歳に達する前から当該事業所を利用していた者は引き続き利用できる。


よくある質問#

Q. A型とB型を同時に開業できますか?#

多機能型事業所として、A型とB型を一体的に運営することが可能である。この場合、利用定員はA型・B型それぞれ10人以上(合計20人以上)とする。

Q. A型の利用者を一般就労に移行させた場合、何か評価されますか?#

就労移行支援体制加算として、一般就労への移行実績が評価される。A型から一般企業へ移行した利用者が6か月以上継続就労した場合に加算が算定できる。

Q. 新規指定の場合、スコアはどのように算定されますか?#

新規指定事業所は、指定後最初のスコア評価までの間、区分(五)(80点以上105点未満に相当)として取り扱われる4

Q. 生産活動収支が赤字になった場合はどうなりますか?#

経営改善計画の提出が求められる。赤字が継続するとスコア評価が大幅に下がり、基本報酬が減少する2

Q. サービス管理責任者が確保できない場合、開業は可能ですか?#

サービス管理責任者は必置であり、確保できなければ指定を受けることはできない。資格要件(実務経験+研修修了)を満たす人材の早期確保が重要である。


Footnotes#

  1. 厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号) 2 3 4

  2. 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬に関する留意事項通知」p.198(就労継続支援A型の生産活動収支に係るスコア評価) 2 3

  3. 厚生労働省「障害福祉サービス等報酬に関する留意事項通知」p.279-284(就労継続支援A型の人員配置基準)

  4. 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.29-31(就労継続支援A型のスコア方式の見直し) 2 3