就労移行支援の基本報酬 — 制度の全体像#
就労移行支援の基本報酬は、事業所の就職後の職場定着率に応じて区分が決まる成果連動型の報酬体系です。一般就労への移行実績と定着実績が高い事業所ほど、高い基本報酬が設定されています1。
基本報酬の区分は、以下の2つの要素で決定します。
- 就職後の職場定着率(5区分)
- 利用定員(定員20人以下・21人以上40人以下・41人以上60人以下・61人以上80人以下・81人以上)
就職後の職場定着率と報酬区分#
就職後の職場定着率は、過去3年間の就労移行支援の利用者のうち、一般就労へ移行し6か月以上定着した者の割合で算出します1。
| 区分 | 定着率 | 報酬水準 |
|---|---|---|
| 就労移行支援サービス費(Ⅰ) | 5割以上 | 最高 |
| 就労移行支援サービス費(Ⅱ) | 4割以上5割未満 | 高 |
| 就労移行支援サービス費(Ⅲ) | 3割以上4割未満 | 中 |
| 就労移行支援サービス費(Ⅳ) | 2割以上3割未満 | やや低 |
| 就労移行支援サービス費(Ⅴ) | 2割未満 | 低 |
定着率の計算方法#
定着率 = 過去3年間で6か月以上職場定着した者の数 ÷ 過去3年間の利用者数
- 「過去3年間」とは、前年度から起算して3年度間を指します
- 「6か月以上定着」とは、就職日から6か月間継続して雇用されていることを確認できた者です
- 就労継続支援A型への移行は「一般就労」に含まれません2
基本報酬の単位数一覧#
定員20人以下の場合#
| 区分 | 定着率 | 単位数(1日) |
|---|---|---|
| サービス費(Ⅰ) | 5割以上 | 1,128単位 |
| サービス費(Ⅱ) | 4割以上5割未満 | 914単位 |
| サービス費(Ⅲ) | 3割以上4割未満 | 768単位 |
| サービス費(Ⅳ) | 2割以上3割未満 | 622単位 |
| サービス費(Ⅴ) | 2割未満 | 556単位 |
定員21人以上40人以下の場合#
| 区分 | 定着率 | 単位数(1日) |
|---|---|---|
| サービス費(Ⅰ) | 5割以上 | 1,013単位 |
| サービス費(Ⅱ) | 4割以上5割未満 | 820単位 |
| サービス費(Ⅲ) | 3割以上4割未満 | 689単位 |
| サービス費(Ⅳ) | 2割以上3割未満 | 558単位 |
| サービス費(Ⅴ) | 2割未満 | 499単位 |
※ 定員41人以上の事業所については、定員規模が大きくなるほど単位数は逓減します1。
※ 上記の単位数は令和8年6月施行の報酬算定構造に基づきます。地域区分による上乗せが別途加算されます。
新規事業所の取扱い#
開設から2年度以内の新規事業所は、就職実績がないため定着率の算出ができません。この場合、以下のルールが適用されます2。
- 開設1年度目 — サービス費(Ⅱ)の単位数を適用
- 開設2年度目 — 1年度目の実績に基づき区分を判定。実績がない場合はサービス費(Ⅳ)を適用
新規事業所は開設初年度から高い報酬区分(Ⅱ)でスタートできるため、開設当初の経営安定に配慮された設計となっています。ただし、2年度目以降は実績がなければ区分が下がるため、早期から就職実績の積み上げが重要です。
報酬を最大化するための実務ポイント#
定着率の向上が最優先#
就労移行支援の報酬は、利用者を一般就労へ移行させるだけでなく、6か月以上の職場定着を実現することで初めて高い区分を維持できます。以下の取り組みが有効です。
- 就職前のマッチング精度の向上(職場見学・実習の充実)
- 就職後の定期的なフォローアップ(就労定着支援との連携)
- 企業側への障害特性の情報提供と職場環境調整の支援
就労移行支援体制加算の活用#
就労移行支援体制加算は、前年度に一般就労へ移行した利用者がいる場合に算定できる加算です。移行実績が多いほど高い単位数を算定でき、基本報酬と合わせて事業所の収益を大幅に向上させることができます1。
定員規模の戦略的設定#
基本報酬は定員規模が小さいほど単位数が高く設定されています。事業所の立地、利用見込み、スタッフ体制を総合的に勘案し、最適な定員規模を設定することが経営上重要です。
注意すべき減算#
以下の減算は基本報酬に直接影響するため、特に注意が必要です。
| 減算項目 | 減算内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 人員欠如減算 | 所定単位数の70% | 人員配置基準の未充足 |
| 個別支援計画未作成減算 | 所定単位数の70%(2月目まで)/ 50%(3月以上) | 計画未作成・更新漏れ |
| 開所時間減算 | 所定単位数の一定割合 | サービス提供時間が規定未満 |
| 身体拘束廃止未実施減算 | 1日5単位減算 | 委員会未設置・指針未整備 |
よくある質問#
Q. 就労継続支援A型への移行は定着率の計算に含まれますか?#
含まれません。定着率の計算における「一般就労」とは、雇用契約に基づく企業等での就労を指し、就労継続支援A型事業所での就労は対象外です2。
Q. 利用者が就職後すぐに離職した場合、定着率にどう影響しますか?#
6か月以上の職場定着が確認できなかった場合、定着率の分子(6か月以上定着した者の数)には算入されません。一方、分母(過去3年間の利用者数)には算入されるため、定着率が下がる要因となります2。
Q. 定着率が低い場合に報酬区分を改善する方法はありますか?#
定着率は過去3年間の実績で算出するため、直近の年度で定着実績を積み上げることで、翌年度以降に改善が見込めます。就労定着支援との連携や、就職前のアセスメント強化、企業とのマッチング精度向上などに取り組むことが効果的です。
Q. 年度途中で定着率が変動した場合、報酬区分は変わりますか?#
報酬区分は年度単位で決定されるため、年度途中で定着率が変動しても当該年度の区分は変わりません。次年度の届出時に改めて定着率を算出し、該当する区分で届け出ます1。
令和8年6月臨時改定の影響#
令和8年6月の臨時改定では、障害福祉サービス全体の基本報酬に1.8%相当の上乗せが行われています。就労移行支援の基本報酬もこの引上げの対象であり、上表の単位数は引上げ後の数値です1。
臨時改定は、物価高騰・賃上げ対応を目的とした時限的な措置ですが、処遇改善加算の拡充とあわせて、就労移行支援事業所の経営基盤の安定化に寄与するものとなっています。